2009年12月31日

砂のクロニクル〈下〉/船戸 与一 ★★★

日本人武器商人”ハジ”はグルジアマフィアから武器を調達し、
イランに密輸する。しかし、その過程で少しづつ歯車が狂っ
ていく。

各章で繰り広げられた様々な人々の物語が、終章で一気に
集束すのだが、今一つ期待はずれだった。様々な物語を読み
進めていただけに、最後はもう少し盛り上げて欲しかった。
二人の日本人”ハジ”も、なんだか厭世的で気が滅入りそう
になった。

砂のクロニクル〈下〉 (新潮文庫)
砂のクロニクル〈下〉 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
機は熟した。運命の糸に操られるかのようにマハバードには様々な人間が集まっていた。革命防衛隊副部長のガマル・ウラディ、隊員のサミル・セイフ、クルド・ゲリラのハッサン・ヘルムート、過去を抱えた女シーリーン、そして二人の“ハジ”も。それぞれの思惑が絡み合い、マハバードは今、燃え上がる―冒険小説の第一人者が渾身の力を込めて描く壮大なる叙事詩。山本周五郎賞受賞作。

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2009年12月28日

砂のクロニクル〈上〉/船戸 与一 ★★★

映画、もしくは映画を意識した劇画調のオープニングである。
だが、少し判りにくかった。少し経ってから、やっと作者が意図
していた事が理解できた。文字だけが全ての小説という媒体では
オープニングをもっと工夫すべきである。

中東の少数民族クルドが武装蜂起をもくろみ、必要な武器の調達
を日本人の武器商人”ハジ”に依頼する。章ごとに敵味方様々な
人物の視点により物語は進行する。重奏的な構成である。

この構成は、多数の人物が登場する群像小説でストーリーが輻輳
する事がないという利点があるのだろう。しかし逆に、ストーリー
の進行が遅いという欠点もある。読んでいて少しイラついた。

クルドという民族の歴史や中東情勢、イスラム教などに馴染みが
ないため今一つ感情移入出来なかった。歴史背景を知っていれば
もっと楽しめたのかも知れない。

砂のクロニクル〈上〉 (新潮文庫)
砂のクロニクル〈上〉 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
民族の悲願、独立国家の樹立を求めて暗躍する中東の少数民族クルド。かつて共和国が成立した聖地マハバードに集結して武装蜂起を企む彼らだったが、直面する問題は武器の決定的な欠乏だった。クルドがその命運を託したのは謎の日本人“ハジ”。武器の密輪を生業とする男だ。“ハジ”は2万梃のカラシニコフAKMをホメイニ体制下のイランに無事運び込むことができるのか。山本周五郎賞受賞作。

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2009年12月27日

TVJ/五十嵐 貴久 ★★★★

某文学賞に応募した、作者の幻のデビュー作なのだそうだ。
だけど、この作品で賞は取れないだろう。それどころか、
吊るし上げをくらっても仕方ないと言うのが素直な感想である。

作品としては非常に面白い。軽快なテンポで一気に読める。
だけど、どこかで観た事がある面白さなのだ。犯人の行動や
狙いなど、容易に想像がついてしまう。

ただ、登場人物のキャラクター作りの上手さ、軽快なストーリー
運び、交渉人の登場など、その後の作者の活躍を感じさせる
ものはある。

一つ気になったのは、コンピュータルームに消火器が置いて
あるのだろうか、という事である。普通、大規模なコンピュータ
ルームでは、消火設備にはハロンガスを使うのではないだろ
うか。まあ、瑣末な事ではあるが。

TVJ (文春文庫)
TVJ (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
お台場にあるテレビ局が、72時間テレビ生本番の最中に、正体不明のグループにのっとられた。劇場型犯罪に翻弄される警察。犯人たちの真の狙いは何か?30歳を目前にした女子経理部社員が、人質になった恋人を救うため、たったひとりで立ち向かう。手に汗握る、著者の全てが詰まった幻のデビュー作。

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2009年08月31日

今月の読書記録

今月レビューを書いた作品は6作でした。
面白かったのは、『イベリアの雷鳴/逢坂 剛』です。
いま続編の『遠ざかる祖国』を読んでいるところです。

まだ読んだ本にレビューが追いつかない状態ですが、
来月はもっとたくさん書けるように頑張ります。

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2009年08月26日

死ぬまでの僅かな時間/井沢 元彦 ★★★★

今まで一度でも井沢元彦の本を読んだ事がある人なら、
この作品を本当に井沢元彦が書いたのかと驚くだろう。
それ程異色の作品である。

女性を誘拐し、陵辱した後にギロチンで首をはねる。
それだけでは飽き足らず、その後ホルマリン漬けの生
首を部屋に飾っておく。かなりグロテスクで、眉をひそめ
たくなるような話だが、こういう話が好きな人にはそれな
りに楽しめるのかも知れない。

この作品の最大の謎は、被害者がどのようにして選ば
れたかというものである。しかし、頭のおかしな人の脳
内ルールなど、予測するのは所詮不可能である。

謎を解くのは、誘拐した女子アナウンサーを自宅で飼育
している宝城というゲームクリエーターである。変態には
変態ということなのだろう。この殺人ルールには多少なり
とも井沢元彦らしさが出ている。

前半では陵辱や殺人のシーンがたっぷりと書き込まれて
いるのだが、後半は書き飛ばされている。作者が書き急
いだのか、犯人の行動も性急すぎる印象がある。結末は
あっさりとしすぎている。宝城と陽子の関係も予想がつい
てしまった。もう少し工夫して欲しかった。

死ぬまでの僅かな時間 (双葉文庫)
死ぬまでの僅かな時間 (双葉文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
表と裏の顔をもつ二人の男がいる。秘密の部屋で花形女子アナウンサーを飼育するゲームクリエーター・宝城哲。つぎつぎと若い女を凌辱しては殺すサディスト・甚目寺涼太。被害者たちは偶然、殺されたわけではないはずだ。挑戦状を受け取った宝城が思いついた驚くべき殺人ルールとは!?興奮の長編ミステリー。

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2009年08月25日

百舌の叫ぶ夜/逢坂 剛 ★★★

時系列や登場人物が輻輳し、非常に読みにくい。最初のうちは
何がなんだか判らない。終盤に向かい徐々に集束して行くのだ
が、途中何度もプロローグを読み直した。

最大の謎は兄の記憶喪失と同時に姿を消した新谷の妹の行方
だろう。中盤で明らかになるのだが、現実感に欠けるという気が
する。それは新谷兄妹の描写が不足しているからではないか。

ラストも、大掛かりな国家的陰謀でもあるのかと思っていたが、
私怨といっても良い極めて個人的な動機であり、スケールが小
さく期待はずれであった。無理やり政治家を出してこじつけたよ
うにも思える。

この作品はハードボイルドというより、プロットに重きを置いたミス
テリーといった方が良い。ハードボイルドとしては小細工を弄し
すぎているようで痛快さに欠ける。

百舌の叫ぶ夜 (集英社文庫)
百舌の叫ぶ夜 (集英社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
能登半島の突端にある孤狼畔で発見された記憶喪失の男は、妹と名乗る女によって兄の新谷和彦であると確認された。東京新宿では過激派集団による爆弾事件が発生、倉木尚武警部の妻が巻きぞえとなり死亡。そして豊明興業のテロリストと思われる新谷を尾行していた明星美希部長刑事。錯綜した人間関係の中で巻き起こる男たちの宿命の対決。その背後に隠された恐るべき陰謀。迫真のサスペンス長編小説。

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2009年08月21日

池袋ウエストゲートパーク/石田 衣良 ★★★★★

生き生きと、躍動感にあふれた若者の心をそのまま小説に書き
しるす。こういう新鮮な文章の書ける作家に出会ったのは、本当
に久しぶりである。

この作品が多くの読者に読まれているのは、マコトという主人公
の造形に成功した事が大きいだろう。大人でもなく、子供でも無
い。漫画や映画ではなく、少なくともミステリーという分野で、この
ような主人公が登場する作品は初めてでは無いだろうか。

本書に書かれている内容は、見方によっては暗くきつい。心を病
んでいる人間が書かれている。しかし、その内容にも関わらず、
読後感がさわやかですらあるのは、マコトの性格と、軽妙な語り
口にあるのだろう。

しかし、第一話での印象が鮮烈だったためか、第二話以降で
「揉め事処理人」という名称にマコトがなってしまうと、とたんに
月並みな物に感じてしまう。作者としては、物語を継続する上で、
マコトのポジションを決める必要があったのだろうが。

第二話以降の話は、全て第一話『池袋ウエストゲートパーク』の
オマケであるのではないか。第二作『少年計数機』、第三作『骨
音』と読み進めるうちに、その思いは強くなる。

池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)
池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
刺す少年、消える少女、潰し合うギャング団…。ストリートの「今」を鮮烈に刻む青春ミステリーのニュービート。オール読物推理小説新人賞受賞。

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2009年08月16日

ダーク (下)/桐野 夏生 ★★★

ミロは偽造パスポートを入手し「朴美愛」名義の韓国人として
釜山に逃亡する。海雲台やチャガルチ市場、そしてその近く
にある山の上の街まで、作者は釜山を良く調べているという
印象を受けた。ソウルでも、観光客であふれた明洞ではなく、
梨泰院をミロの隠れ家にするなど、渋いですね。

この作品が面白いかというと、決して面白くはない。馳星周
の書く暗黒小説のように、引きずり込まれるような「何か」が
ある訳ではない。それは、読者の頭の中に、シリーズ物とし
てのミロのイメージが固まってしまっており、本作のミロには
違和感を持ってしまうからでは無いだろうか。

作者はそんなイメージを払拭したかったのかも知れない。そ
れ故に、ミロはあくまでも悪辣に、友部や久恵は人間の汚い
部分を強調されて描かれる。

ちなみに、盲目の久恵と暮らす善三と、下半身不随になった
徐に寄り添うミロは、血は繋がってなくとも、やはり親子だと
感じた。

終盤、友部が、悪い夢を見ていたのかも知れない、と言うくだ
りがあるが、全ては悪夢で、目が覚めれば新宿で私立探偵を
続けているミロがいるのかも知れない。

もっとも、それに対するミロの返答は、「あれは現実そのもの
で、あなたは本当は悪い人なのよ」というものであったが。

ダーク (下) (講談社文庫)
ダーク (下) (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「朴美愛」偽造パスポートを手に入れたミロは海峡を越え韓国に渡る。偽ブランド品を手がける現地の男と即座に愛人契約を結ぶが、彼は自分の身代わりとなって撃たれ下半身の自由を失ってしまう。深い愛情で結びついた二人は復讐を決意した。覚醒剤、レイプ、殺人。善悪を超えて世界を圧倒する壮絶な魂の遍歴。

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2009年08月15日

ダーク (上)/桐野 夏生 ★★★

いったい村野ミロに何が起きたんだ? と言うより、作者に何
が起きたのだろう。前作『天使に見捨てられた夜』では上質な
女流ハードボイルドの世界を構築していたのが、本作では一
転、題名そのもののダークな世界となる。

前作でミロと良い関係を築いていたゲイの隣人友部は、裏切
りや打算に塗れた人物として描かれている。作者はゲイにで
も振られたのだろうか。

物語を読み進めるうち、ここに書かれている世界は全てギャグ
なのでは無いかとすら感じてしまった。そんな中で、ミロの義父
善三と暮らしていた盲目のマッサージ師、久恵の描写は秀逸。
愛する男を殺され、ミロに復讐を誓う姿には女の執念を感じた。

この作品ではミロの変貌振りが唐突すぎる。獄中の男の手紙
を隠匿していたくらいで義父を殺そうとまでするだろうか。今ま
でのシリーズを読んでいた読者には戸惑いが大きいだろう。

ダーク (上) (講談社文庫)
ダーク (上) (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「私の中の何かが死んだ」出所を心待ちにしていた男が四年前に獄中自殺していた。何も知らされなかった村野ミロは探偵を辞め、事実を秘匿していた義父を殺しにいく。隣人のホモセクシャルの親友。義父の盲目の内妻。幼い頃から知っている老ヤクザ。周囲に災厄をまき散らすミロを誰もが命懸けで追い始めた。

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2009年08月12日

イベリアの雷鳴/逢坂 剛 ★★★★★

第二次世界大戦時のヨーロッパを舞台にした国際謀略小説。
この手の話だと大抵はドイツのベルリンが舞台になるのだが、
この作品の舞台はスペインである。

ドイツ国防軍情報部のカナリス提督、英国情報部MI6のヴァ
ジニア・クレイトンなどが、主人公である北都昭平の正体を探
ろうとするのだが、まだ日米開戦前ということで北都自身に
大きな動きは無い。いまだ序盤戦といった所である。

代わりに活躍するのがスペインのフランコ殺害を企む一派で
ある。北都に思いを寄せるペネロペも、やがて巻き込まれて
いく。

終盤、フランコとヒトラーの会談場所に2時間ドラマの如く、
わざとらしくも関係者全員が集合する。ペネロペの件で因縁が
出来てしまった北都とヴァジニア・クレイトンの関係など、今後
の展開を期待させるに充分な内容となっている。

この作品の後、『遠ざかる祖国』、『燃える蜃気楼』、『暗い
国境線』と続く。読み応え充分な国際謀略小説である。

イベリアの雷鳴 (講談社文庫)
イベリアの雷鳴 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
総統暗殺!?一九四〇年。内戦の痛手いまだ癒えぬスペインでは、フランコ殺害を企む一派が活動を続けていた。ジブラルタルを巡り、日英独の諜報戦が熾烈を極めるマドリードに現れた日系ペルー人の宝石商・北都昭平は、やがて激動する歴史の渦へと巻き込まれていく。苛烈な闘いを緻密に描くエスピオナージ。

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