2008年05月19日

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)/山崎 豊子 ★★★★

内容(「BOOK」データベースより)
広大なアフリカのサバンナで、巨象に狙いをさだめ、猟銃を構える一人の男がいた。恩地元、日本を代表する企業・国民航空社員。エリートとして将来を嘱望されながら、中近東からアフリカへと、内規を無視した「流刑」に耐える日々は十年に及ぼうとしていた。人命をあずかる企業の非情、その不条理に不屈の闘いを挑んだ男の運命―。人間の真実を問う壮大なドラマが、いま幕を開ける。

この作品は、取材した事実に基づき、小説的に再構築した作品である。
主人公の恩地元は、組合の委員長としてストライキを決行した事により
会社に睨まれ、中近東からアフリカへと内規を無視した十年近くの海外
赴任を強いられる。アフリカ篇(上)(下)は恩地の回想により、その間の
事情が語られる。

うざい妻子を日本に残し、アフリカで狩猟ざんまいの日々。
何人もの召使いを雇い、日本の住宅事情では考えられない広い屋敷
に住む。天国じゃないか。この男は何が不満なんだ?

長期の海外赴任を拒否する姿勢には、世界に航路を伸ばそうとしている
ナショナル・フラッグの社員として、国際感覚が欠如していると思った。
航空会社に限らず、商社やメーカーなどでも、ニューヨークやロンドン等、
先進国の主要都市に配属されるのは極一部のエリートだけで、大部分の
海外赴任者は僻地に赴任しているのではないだろうか。海外赴任が嫌
ならば、そもそも何故航空会社を就職先として選んだのだろう。転職とか
は考えなかったのだろうか。

日本に戻すという話も何度かあったが、恩地は頑なに拒否している。
会社にも問題があるが、恩地自身にも問題があったのではないかと
思えてしまう。

日本を代表する航空会社の複雑な労使問題、経済性や効率を追求する
あまり、安全性を疎かにする経営陣の体質など、考えさせられる事の
多い作品である。

参考リンク
日本航空インターナショナル
日本航空の組合問題
小倉寛太郎(恩地元の原型とされる人物)

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)
沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

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2008年05月20日

沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) /山崎 豊子 ★★★★

内容(「BOOK」データベースより)
パキスタン駐在を終えた恩地を待ち受けていたのは、さらなる報復人事だった。イラン、そして路線の就航もないケニアへの赴任。会社は帰国をちらつかせ、降伏を迫る一方で、露骨な差別人事により組合の分断を図っていた。共に闘った同期の友の裏切り。そして、家族との別離―。焦燥感と孤独とが、恩地をしだいに追いつめていく。そんな折、国民航空の旅客機が連続事故を起こす…。

パキスタン、イラン、ケニアと、恩地の海外たらい回しの旅は続く。
組合の副委員長として共に闘った同期の行天は会社側に寝返り
順調に出世を重ねていく。

そんな中、1972年に国民航空の旅客機がニューデリー、ボンベイ、
モスクワと連続して事故を起こす。事故調査班として現地に派遣
された国民航空社員の苦闘が書かれる。

しかし、事故原因をパイロットのミスとする社員の考えは無視され、
会社には空港設備の不備であるとの報告が出される。また、事故
原因調査に同行したパイロットが、同じパイロット仲間を擁護する
ため、自分の目で見た事実を信じず、執拗に仮定の想像を繰り返し、
空港設備に責任を求める姿にはあきれてしまった。

このような体質が、日本航空(作中では国民航空)123便墜落事故
に繋がって行ったのではないだろうか。

やがて、恩地に日本帰国の話が出てくる。しかし、それは会社側が
折れた訳では無く、連続事故の背景に国民航空の労使関係が影響
しているのではないかと国会で追及されたからであった。会社として
は、更なる僻地へ追いやる計画もあったようだ。

家族との別れ、出世を重ねるかつての仲間、海外で一人仕事をする
孤独、日本で会社に差別されながらも頑張っている組合の仲間、様々
な思いが積み重なり、恩地は精神的に追い込まれていく。

執拗な報復人事、組合つぶし、安全軽視の体質など、会社の非情
さが赤裸々に書かれるアフリカ篇。
そして物語は運命の御巣鷹山篇へと続く。

参考リンク
日航機墜落事故

沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)
沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)

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2008年07月09日

沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇/山崎 豊子 ★★★★★

内容(「BOOK」データベースより)
十年におよぶ海外左遷に耐え、本社へ復帰をはたしたものの、恩地への報復の手がゆるむことはなかった。逆境の日々のなか、ついに「その日」はおとずれる。航空史上最大のジャンボ機墜落事故、犠牲者は五百二十名―。凄絶な遺体の検視、事故原因の究明、非情な補償交渉。救援隊として現地に赴き、遺族係を命ぜられた恩地は、想像を絶する悲劇に直面し、苦悩する。慟哭を刻む第三巻。

この作品は、取材した事実に基づき、小説的に再構築した作品である、
という事になっている。しかし、航空史上最大のジャンボ機墜落事故の
克明な記録として、遺族の遺体確認や補償交渉のリアリティー、生々しさ
には圧倒される。作者の詳細な取材力には感心する。

しかし、もっとも心を打たれたのは、迷走する飛行機の中で家族に向けて
書かれた遺書を読んだ時だった。百万の言葉を弄するより、手帳に書か
れた短い文章の中に家族への思いや無念さが伝わって来る。

参考リンク
日本航空123便墜落事故
コックピットボイスレコーダーと調査委報告書を基にしたflash 地形・解説付き

沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)
沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)

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2008年07月25日

沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上)/山崎 豊子 ★★★★

内容(「BOOK」データベースより)
「空の安全」をないがしろにし、利潤追求を第一とした経営。御巣鷹山の墜落は、起こるべくして起きた事故だった。政府は組織の建て直しを図るべく、新会長に国見正之の就任を要請。恩地は新設された会長室の部長に抜擢される。「きみの力を借りたい」。国見の真摯な説得が恩地を動かした。次第に白日の下にさらされる腐敗の構造。しかし、それは終わりなき暗闘の始まりでしかなかった…。

会長室編では、御巣鷹山の墜落事故後、組織の建て直しを図るため
首相に請われて国民航空の会長に就任した国見正之を中心として
物語が展開する。恩地は新設された会長室の部長に抜擢される。

国見会長は建て直しの手始めとして分裂している組合の統合を目指す。
整備士や機長など各部門から会社の現状について意見を聞くのだが、
その中で、「自分達の理想像」を熱く語る者はいても、「お客様にとって
の理想像」を語る者はいない。

一例を挙げれば、ある機長が、「昨年ソウルで着陸復行をした際、乗り
合わせた大蔵大臣から機長のアナウンスが無かったと指摘された為、
オペレーション・マニュアルがアナウンスをするように改定された。
しかし、安全上、課業順位最下位とも言えるアナウンスを、神経を最も
使う着陸復行、最進入の途中で課すなど考えられない。このように我々
の立場にたって考えてくれない職制である」と憤る。

この機長は、自分達が乗せているのが荷物だとでも思っているのだろうか。
乗客の立場にたって考えてみれば、アナウンスも無く着陸復行をされたら
不安を感じるのは当然である。機長が忙しければパーサーがアナウンス
すれば良いだけの話ではないだろうか。

このように、この会社の社員はお客様の立場にたって考えるという意識
が欠落しているのである。まるで社会主義国の航空会社のようだ。
上層部の腐敗や癒着などより、社員のこのような考え方の方が利用者
としては怖い。まさに国民不在の国民航空である。

この航空会社を国民航空と名付けたのは、作者である山崎氏の痛烈な
皮肉なのではないだろうか。

沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)
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2008年09月04日

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下)/山崎 豊子 ★★★★

内容(「BOOK」データベースより)
会長室の調査により、次々と明るみに出る不正と乱脈。国民航空は、いまや人の貌をした魑魅魍魎に食いつくされつつあった。会長の国見と恩地はひるまず闘いをつづけるが、政・官・財が癒着する利権の闇は、あまりに深く巧妙に張りめぐらされていた。不正疑惑は閣議決定により闇に葬られ、国見は突如更迭される―。勇気とは、そして良心とは何かを問う壮大なドラマ、いよいよ完結へ!。

組合の元委員長、恩地元を主人公とする物語は、事実上アフリカ篇
で終わる。 御巣鷹山篇では悲惨な航空機墜落事故そのものが中心と
なり、会長室篇では新生国民航空に会長として就任した国見が主役と
なる。

この作品は、「取材した事実に基づき、小説的に再構築した作品である」
と作者自ら言っている。作品のモデルとなった人物が、御巣鷹山の墜落
事故に直接関わっていなかった等の批判もあるが、あくまでもこの作品は
小説であり、作者の創作であると判断したい。だって、こんな航空会社が
実際にあったら嫌だもんね。

ただ、御巣鷹山編では墜落事故の状況や、その後の補償交渉まで、非常
に生々しく綴られている。作者の緻密な取材が伺われるが、リアリティーが
豊かな分だけ、この作品がノンフィクションではないかと誤解されるのでは
ないだろうか。

会長室編のラストは、唐突に終わってしまった印象がある。
恩地や国見が聖人君子として描かれているのに対して、作品上の悪役
である行天四郎の方が妙に人間臭く、親しみをもてたりしてしまう。

魑魅魍魎にまみれた国民航空。しかし、国民航空は今日も飛ぶ。
国民の夢を乗せて。

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)
沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

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