2007年01月29日

ワイルド・ソウル〈上〉〈下〉/垣根 涼介 ★★★★

内容(「BOOK」データベースより)<上>
一九六一年、衛藤一家は希望を胸にアマゾンへ渡った。しかし、彼らがその大地に降り立った時、夢にまで見た楽園はどこにもなかった。戦後最大級の愚政“棄民政策”。その四十数年後、三人の男が東京にいた。衛藤の息子ケイ、松尾、山本―彼らの周到な計画は、テレビ局記者の貴子をも巻き込み、歴史の闇に葬られた過去の扉をこじ開けようとする。

内容(「BOOK」データベースより)<下>
呪われた過去と訣別するため、ケイたち三人は日本国政府に宣戦布告する。外務省襲撃、元官僚の誘拐劇、そして警察との息詰まる頭脳戦。ケイに翻弄され、葛藤する貴子だったが、やがては事件に毅然と対峙していく。未曾有の犯罪計画の末に、彼らがそれぞれ手にしたものとは―?史上初の三賞受賞を果たし、各紙誌の絶賛を浴びた不朽の名作。

確かに小説としては面白いと思う。
スピード感あふれテンポ良く、ページをめくるワクワク感もある。
ブラジル移民の悲惨な実態は良く書けてるし、登場人物のキャラも立ってる。
ちなみに、貴子という登場人物の造形は、氷室冴子さんの書く、ちょっととがった
女性に似ていると思った。

でもね、主人公たちの動機がねー。
そりゃ確かにブラジル移民は悲惨な思いをしたんでしょう。
外務省の対応も悪かったんでしょう。
だけど、悲惨な思いをしたのは、ブラジル移民だけじゃないでしょう。
戦争や、公害や、薬害エイズなど、政府や関係省庁の無能な対応で
悲惨な思いをした人は他にもいっぱいいます。

40年も経ってから政府に復讐してどうなるの?
ブラジル移民が戦争等と違うのは、その実態を殆どの人が知らなかった
という事で、世間にその悲惨さや外務省の不手際を訴えたかったという
のは判ります。

だけどさ、派手な事件を起こして一時的に世間の注目を集めても、
首相から遺憾の意を引き出しても、結局はただの自己満足にしか
ならないんじゃないの?

「金が欲しい!」とか、「誰かをぶっ殺してやる!」といった、月並みだけど
単純な動機の方が、より主人公たちに感情移入できたような気がする。

ワイルド・ソウル〈上〉
ワイルド・ソウル〈上〉

ワイルド・ソウル〈下〉
ワイルド・ソウル〈下〉
posted by まどか at 03:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 垣根 涼介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月26日

ヒートアイランド/垣根 涼介 ★★★★

内容(「BOOK」データベースより)
渋谷でファイトパーティーを開き、トップにのし上がったストリートギャング雅。頭のアキとカオルは、仲間が持ち帰った大金を見て驚愕する。それはヤクザが経営する非合法カジノから、裏金強奪のプロフェッショナルの男たちが強奪した金だった。少年たちと強奪犯との息詰まる攻防を描いた傑作ミステリー。

大藪春彦のDNAを、もっとも色濃く継承している作家である。
もちろん大藪春彦は、ハードボイルドを志向する後進の作家に多大な影響
を与えている。そんな中で、垣根涼介氏は大藪春彦のスピリットまで継承
している、数少ない成功例だと思う。

車や銃に関する詳細な描写、特に、高度にチューンした車を、目立たない
様に逆改造している箇所などは泣けてきた。また、単に大藪作品の描写の
真似事に留まらず、主人公のアキがチームを作るため、他チームのヘッド
と対決する際、一切手加減をせず力でねじ伏せる様子や、窃盗団のプロに
徹した姿勢など、まぎれも無く大藪スピリットの片鱗を感じさせる。

まるで、大藪春彦の新作を読んでるようで、懐かしいと言うか、妙に嬉しく
なってしまった。ただ、この作品には大藪作品のもう一つの要素である「女」
は出てこないが。もちろん、大藪春彦を知らない人が読んでも充分楽しめる、
読み出したら止まらない作品である。

あたしとしては、アキやカオルといった少年たちより、プロの窃盗団の方に
魅力を感た。読んでる時は夢中で読んでしまったが、後から考えてみると
主人公のアキは、自分たちの組織や利権を守るため、小細工を弄してる
ようにも思えてしまう。

それと、プロの窃盗団が紛失した金を回収しようとする件は微妙である。
三千万程度の金額なら損金としてあきらめるのではないだろうか。
あれだけ素性を隠す事に用心深い男たちが、サングラスも変装もせず、
多くの人前に素顔をさらしているのもおかしい。

解説で大沢在昌氏が指摘してるように、垣根作品の特徴つとして、ラストで
主人公が破滅に向かわない事が上げられる。本作でも、『ワイルド・ソウル』
でも、明日を感じさせるエンディングとなっている。確かにエンターテイメント
としては、さわやかなエンディングは重要だと思うが、一方で主人公の行動
の足枷になっている気もする。今ひとつ、枠の中に納まっている感じがする
のである。一度突き抜けた作品も読んでみたい。

ヒートアイランド
ヒートアイランド

posted by まどか at 01:06| Comment(3) | TrackBack(2) | 垣根 涼介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月14日

午前三時のルースター/垣根 涼介 ★★★★

内容(「BOOK」データベースより)
旅行代理店に勤務する長瀬は、得意先の中西社長に孫の慎一郎のベトナム行きに付き添ってほしいという依頼を受ける。慎一郎の本当の目的は、家族に内緒で、失踪した父親の消息を尋ねることだった。現地の娼婦・メイや運転手・ビエンと共に父親を探す一行を何者かが妨害する…最後に辿りついた切ない真実とは。サントリーミステリー大賞受賞作。

ベトナムには行った事がありませんが、何故かベトナムの事なら
多少は知っています。自分が知らない国なら、素直に読んでしまう
所ですが、知っている国だと妙にディティールにこだわってしまいます。

主人公は45タイヤを履いたタクシーの運転手を雇いますが、あたしなら
東南アジアの道路を、45タイヤを履いた車で走ろうとは思いません。
RV車の方が余程実用的です。
また、作者は知ってか知らずか、社会主義国としての、ベトナム独自
のシステムについても、誤りが有ると言うか、書かれていない部分が
あります。

もちろん、そんな事に関係なく、読み物として充分楽しめる作品である
事は間違いありません。
少年の成長と明日への希望といった、作者の主張が感じられます。
荒削りな部分もありますが、デビュー作でこれだけ書けるなら大した
ものです。ただ、取って付けたようなタイトルはどうかと思います。

午前三時のルースター (文春文庫)
午前三時のルースター (文春文庫)
posted by まどか at 19:17| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 垣根 涼介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月13日

君たちに明日はない/垣根 涼介 ★★★★

内容(「BOOK」データベースより)
「私はもう用済みってことですか!?」リストラ請負会社に勤める村上真介の仕事はクビ切り面接官。どんなに恨まれ、なじられ、泣かれても、なぜかこの仕事にはやりがいを感じている。建材メーカーの課長代理、陽子の面接を担当した真介は、気の強い八つ年上の彼女に好意をおぼえるのだが…。恋に仕事に奮闘するすべての社会人に捧げる、勇気沸きたつ人間ドラマ。山本周五郎賞受賞作。

作品のタイトルと、垣根氏の過去の作風から見ると、この作品
は殺し屋を主人公としたハードボイルドではないかと思われる。
ところが、リストラをテーマとしたサラリーマン小説なのである。
これまでの大藪春彦調から荻原浩調にシフトしたようである。

リストラというのは、サラリーマンにとって死にも等しいものでは
ないだろうか。主人公の村上真介はリストラ請負会社に勤める
面接官である。ある意味殺し屋と言えるのかも知れない。
軽い性格のように描かれているが、押さえる所はきちんと押さえて
いる。仕事に取り組む姿勢は、まぎれも無くプロフェッショナブル
のものである。

連作短編集なので読み足りない部分もあった。特に「File.4 八方
ふさがりの女」は名古屋の描写が面白く、もっと続きを読みたかった。

作品としては面白いのだが、冒険小説でもサラリーマン小説でも、
垣根氏の作品は二番煎じという気がする。似たような作品を書いて
いる先人がいるのである。主人公が枠の中に納まっていると
いうのも気になる。一見ワイルドに見える垣根作品の主人公だが
常に安全サイドに身を置き、決して一線を越えようとはしない。
センターラインを割ろうとはしないクレバーな走り、と言えば
聞こえは良いのだが。

君たちに明日はない (新潮文庫)
君たちに明日はない (新潮文庫)

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posted by まどか at 06:01| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 垣根 涼介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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