2009年05月01日

ウルトラ・ダラー/手嶋 龍一 ★★★

「わが国に初めて誕生したインテリジェンス小説」、なのだそうだ。
作者は長年NHKに勤めた外交ジャーナリストの手嶋龍一氏。
インテリジェンスか何か知らないが、小説として面白いかどうかは
別物である。

視点が定まっていない箇所がある。時系列が判り難い。伏線が
未消化で登場人物がいつの間にか消えている等、小説としての
基本的な書き方が未熟なのである。新人賞の最終選考に残るか
どうかといったレベルではないだろうか。

作者は経験豊富な外交ジャーナリストだけあって、北朝鮮の偽札
作りを軸とした国家の外交戦略や官僚の駆け引き、諜報活動など
惹かれる部分はあるのだが、エピソードの羅列のようになった感も
あり、ラストも締りが無い。

本書には真実が散りばめられているのかも知れないが、例え
嘘っぱちでも、クリエーターとしてのプロである作家が書いた作品
の方が、小説としては面白いのではないか。もっとも、そういう
作品は本当に数少ないのではあるが。

ウルトラ・ダラー (新潮文庫)
ウルトラ・ダラー (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
1968年、東京、若き彫刻職人が失踪した。それが全ての始まりだった。2002年、ダブリン、新種の偽百ドル札が発見される。巧緻を極めた紙幣は「ウルトラ・ダラー」と呼ばれることになった。英国情報部員スティーブン・ブラッドレーは、大いなる謎を追い、世界を駆けめぐる。ハイテク企業の罠、熾烈な諜報戦、そして日本外交の暗闇…。わが国に初めて誕生した、インテリジェンス小説。

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2009年05月05日

トルーマン・レター/高嶋 哲夫 ★★★

元新聞記者の主人公が、第33代アメリカ合衆国大統領
ハリー・トルーマンの書いたと思われる手紙を偶然手に
入れる所から物語は始まる。手紙の内容は第二次世界
大戦でアメリカが日本に対し原爆投下を決意する真相に
迫る物である。

公式には、原爆投下の目的は地上戦によるアメリカ軍の
損失を最小限に止める為、となっている。しかし、トルー
マンの手紙の内容は人種的偏見に満ちた物であった。
この手紙の真贋を確かめ、いかにして公開するか検討し
ていた主人公と、彼の昔の恋人である大学准教授が、
やがて事件に巻き込まれる。

アメリカ大統領について少し調べてみると、初期から二十
世紀初頭にかけては、人種差別主義者が少なからずいた
ようだ。さすがに最近ではアフリカ系アメリカ人の国務長官
や大統領が登場しているように、あからさまな人種差別を
唱える人物はいないようだが。

ちなみに史実では、日本への原爆投下決定はポツダム
宣言発表前の7月25日となっている。

やや重い文体で、読むのは少し骨がおれた。最初から怪し
い人物は一人しかいないのに、やたらと物語を複雑にして
いるような印象もあった。まあ、国際謀略小説としてはそれ
なりに楽しめる作品ではあるのだが。

歴代アメリカ合衆国大統領の一覧
ハリー・S・トルーマン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

トルーマン・レター (集英社文庫)
トルーマン・レター (集英社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
合衆国大統領トルーマンの私信には、原爆投下の真相が!?偶然「手紙」を手に入れた元新聞記者・峰先は、かつての恋人とともに、諜報戦の渦中に…。サントリーミステリー大賞作家、渾身のサスペンス。

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2009年05月06日

パリ-北京ラリーの華/高斎 正 ★★★

自動車をテーマとした小説を数多く執筆している高斎正氏の作品。
本作は『ホンダがレースに復帰する時』から始まるシリーズの延長
にあると言って良いだろう。しかし、この作品で登場するのは超伝
導蓄電池を積んだ電気自動車である。現実のテクノロジーを使った
一連のシリーズよりはSF色が強い内容となっている。

この作品が書かれたのは1989年である。残念ながら未だに超伝
導蓄電池を積んだ電気自動車と言うのは実用化されていない。
鉛蓄電池を使った電気自動車も普及しているとは言えず、ハイブ
リットカーがやっと普及し始めた所である。この作品に出てきた中で
現在までに実用化されたのはGPSナビゲーターくらいの物である。

本作はダイハツが電気自動車でパリ〜北京間の一万八千キロを
走るラリー(正確にはレイド、冒険旅行の意味)に挑戦するという
ものである。ベースとなる車はアプローズ。そんな車あったのかと
言う程マイナーな車種である。せめてラガー(これもマイナーだが
クロスカントリータイプでトヨタにブリザードの名でOEM供給された)
にした方が良かったのでは無いか。

失礼ながら、親会社のトヨタならともかく、ダイハツの企業規模では
全行程に太陽電池を使った充電設備を建設するというのは無理が
有るのではないだろうか。ガソリンや軽油を使った車より、とんでも
ない費用がかかりそうである。ちなみに、レースの結末は読んでの
お楽しみである。

「メカは書けても人間は書かれていない」。高斎氏の作品に対して
よく言われる言葉である。確かに開発に懸ける技術者の意気込み
や苦悩みたいなものは書かれているのだが、出てくる人間はみん
な優等生で、それこそ機会みたいな人達ばかりである。登場人物
が聖人君子ばかりでは小説としての厚みといったものが感じられ
ない。しかし、『ホンダがレースに復帰する時』から始まるシリーズ
が何作も刊行されているように、高斎氏の作品には何故か心惹か
れるものがあるのも事実である。

パリ-北京ラリーの華 (徳間文庫)
パリ-北京ラリーの華 (徳間文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
いつの日か、常温超伝導は可能になる。自動車の歴史にまったく新しい一ページが書き加えられる可能性が見えて来た。騒音と排気を出さず、地球の環境を破壊しない電気自動車の可能性が…。超伝導現象に注目したダイハツは、独自のプロジェクトチームを組織し、超伝導蓄電池を積んだ電気自動車の開発にあたっていた。折しも開催された全行程一万八千キロ、スペシャルステージ二千キロのパリ―北京ラリー。人類と地球を愛する人々の夢は、技術の壁を突き破れるのか…。長篇カーノベル。

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2009年05月14日

天使に見捨てられた夜/桐野 夏生 ★★★★★

私立探偵・村野ミロを主人公とした女流ハードボイルド。江戸川
乱歩賞受賞作の『顔に降りかかる雨』の続編という位置づけと
なっている。

一読して驚いた。『顔に降りかかる雨』は奇をてらい過ぎた感も
あり、あまり楽しめなかったのだが、本作は同じ主人公を使った、
同じ作者の作品なのに、別人のように小説が上手くなっている。

主人公の村野ミロは失踪したAV女優・一色リナの捜索を依頼さ
れる。最初の内は捜索がテンポ良く進み過ぎるような気がした。
また、登場人物達の言動や行動には疑問を感じる箇所もあった。
しかし、リナの捜索が進むに伴い物語に引き込まれて行く。

悲惨なリナの過去。被害者と思われていた立場が逆転する瞬間
の、恐怖感の盛り上げが見事。『天使に見捨てられた夜』という
タイトルも上手く合っている。

個人的には落ち込んでいるミロの描写が面白かった。落ち込ん
でいるミロを見るともっといじめたくなるような気がした。
お勧めの作品です。

天使に見捨てられた夜 (講談社文庫)
天使に見捨てられた夜 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
失踪したAV女優・一色リナの捜索依頼を私立探偵・村野ミロに持ち込んだのは、フェミニズム系の出版社を経営する渡辺房江。ミロの父善三と親しい多和田弁護士を通じてだった。やがて明らかにされていくリナの暗い過去。都会の闇にうごめく欲望と野望を乾いた感性で描く、女流ハードボイルドの長篇力作。

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2009年05月17日

蒼穹の射手/鳴海 章 ★★

カンボジアを舞台にした怪しげなプロジェクトを探る男達。
夜間低高度侵攻能力と核装備能力を備えたF15イーグルの
部隊を編成しようとする政治家、防衛産業、空自のOB。
そして改造されたF15に搭乗するため集められた空自パイ
ロット。

この人達は一体何がしたかったんだろう?
良く判らない。
そもそも、北の国を空爆に行くのならともかく、カンボジアの
PKO活動に航空兵力が必要とは思えないのだが。

訳が判らない内に、なんとも締りのないラストを迎える。
一体作者は何を書きたかったのだろうか?

蒼穹の射手 (角川文庫)
蒼穹の射手 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
日本がカンボジアでのPKO活動に踏み出した頃、航空自衛隊千歳基地に一人の男が着任した。真田二等空尉、戦闘機パイロットである。彼が搭乗を命ぜられたのは、コクピットの装備がこれまでとまったく異なるF15イーグル。一部の政治家、防衛産業、空自OBらによって極秘に開発されたこの機体には、夜間低高度侵攻能力と核装備能力が与えられていた…。

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2009年05月25日

クローズド・ノート/雫井 脩介 ★★★★

『虚貌』、『火の粉』、『犯人に告ぐ』など、ハードなミステリーを書い
てきた雫井脩介氏の作品だが、これらの作品とは若干趣きが変
わっている。どちらかと言えば主人公の雰囲気などデビュー作の
『栄光一途』に近いだろう。

作品の内容は、少し読んだだけで先の展開が読めてしまう。ただ、
小学校の教員である伊吹先生のノートは非常にリアリティーがあり、
主人公の香恵だけでなく、一緒に読んでいる自分も四年二組の
一員になったような気がしてくる。作者の姉の日記がベースになっ
ているとの事だが、上手く物語りの中にまとめられているのは作者
の力量だろう。

ラストは確かに感動的なのだが、予測の範囲内に収まってしまっ
たという感がある。無神経で優柔不断な印象を受けるイラストレー
ターの彼に、もっとキツイ一発を喰らわせてやりたかった、と言うの
が個人的な感想である。伊吹ノートがあればネタには困らないと
思うのだが。

タイトル通り、本当の物語はノートを閉じた時から始まるのだろう。
そして、ノートを閉じる時、主人公の香恵だけでなく、読者にも、
伊吹先生ありがとう、という思いが残るのではないだろうか。

クローズド・ノート (角川文庫)
クローズド・ノート (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
堀井香恵は、文具店でのアルバイトと音楽サークルの活動に勤しむ、ごく普通の大学生だ。友人との関係も良好、アルバイトにもやりがいを感じてはいるが、何か物足りない思いを抱えたまま日々を過ごしている。そんななか、自室のクローゼットで、前の住人が置き忘れたと思しきノートを見つける。興味本位でそのノートを手にする香恵。閉じられたノートが開かれたとき、彼女の平凡な日常は大きく変わりはじめるのだった―。

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2009年05月31日

こんばんは

今月レビューを書いた作品は6作でした。
面白かったのは『天使に見捨てられた夜/桐野夏生』と
『クローズド・ノート/雫井脩介』ですね。

来月も頑張ってたくさんのレビューを
書きたいと思います。

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posted by まどか at 21:12| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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